インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進する

ガイトン生理学原著第11版p1023から

インスリンの脂肪代謝への作用
Efect of insulin on Fat Metabolism

インスリンの炭水化物への急性効果のように目に見えるものではないが、インスリンの脂肪代謝への作用も結局、同様に重要である。
特に劇的なのは、インスリン欠乏insulin lackの長期効果で、しばしば心臓発作、脳卒中や他の血管障害を引き起こす極端なアテローム性動脈硬化の原因となる。
しかし、最初にインスリンの脂肪代謝に及ぼす急性効果について考察しよう。

インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進する
insulin Promotes Fat Synthesis and storage

インスリンは脂肪細胞に脂肪を貯蔵させるいくつかの作用を持つ。
第一に、インスリンは身体の大部分の組織において、グルコース利用を増加させ、その結果自動的に脂肪の利用を減少させ、こうして脂肪の節約者として機能する。
しかしながら、インスリンはまた 、脂肪酸合成を促進する。
これは特に即座のエネルギーとして利用されうるより多くの炭水化物が摂取され、そのため脂肪酸合成の基質を提供するようなときに当てはまる。
ほとんどすべてのこの合成は肝細胞で行われ、そして、脂肪酸は肝臓から血中のリポタンパク質の方法で脂肪細胞へ輸送され貯蔵される
肝臓における脂肪酸合成を増加させる様々な因子は、下記のようなものが含まれる。

1.インスリンは肝臓へのグルコース輸送を増加させる。
肝グリコーゲンの濃度が5-6%に達した後、これはそれ自身さらなるグリコーゲン合成を阻害する。
次いで、肝細胞に入ってくるすべての余分なグルコースが脂肪を生成するのに利用可能となる。
グルコースは最初に、解糖経路でビルビン酸に分解され、次いでビルビン酸はアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)に変換されて、脂肪酸が合成される基質となる。

2.過剰な量のグルコースがエネルギーとして利用されたとき、過剰なクエン酸とイソクエン酸イオンがクエン酸サイクルにより形成される。
これらのイオンは次いでアセチルCoAカルボシキナーゼを活性化する直接作用を持つ。
この酵素は脂肪酸合成の最初の段階であるアセチルCoAをカルボキシル化して、マロニルCoAを形成するのに必要である。

3.次いで、脂肪酸の大部分は肝臓自体の中で合成され、貯蔵脂肪の通常の形であるトリグリセリドの生成に用いられる。それらは肝細胞から血中にリポタンパク質として放出される。
インスリンは、脂肪細胞の毛細血管壁にあるリポタンパク質リパーゼlipoprotein lipaseを活性化して、トリグリセリドを脂肪細胞に吸収させるのに必要な脂肪酸に再度分解し、脂肪細胞で再びトリグリセリドに変換されて貯蔵される

脂肪細胞における脂肪の貯蔵に果たすインスリンの役割:インスリンは脂肪細胞において、脂肪が貯蔵されるのに必要な2つの他の必須な作用を持っている。

1.インスリンはホルモン感受性リパーゼの作用を抑制する
これは既に脂肪細胞に貯蔵されているトリグリセリドの加水分解を起こす酵素である。
それゆえ、脂肪細胞から循環血中への脂肪酸の放出が抑制される。

2.インスリンは筋肉細胞へのグルコースの輸送を促進するのと全く同じ方法で、脂肪細胞中への細胞膜を通したグルコース輸送を促進する
このグルコースのいくらかは、次いでわずかな量の脂肪酸の生成に用いられるが、もっと重要なことは、これがまた大量のαグリセロールリン酸を作ることである。
この物質は、脂肪細胞中の脂肪の貯蔵型であるトリグリセリドを生成するために、脂肪酸と結合するグリセロールglycerolを供給する
それゆえ、インスリンが利用できないと肝臓からリポタンパク質の形で輸送された大量の脂肪酸の貯蔵さえもほとんど阻害される